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2019-10-23

消費税の課税・非課税を間違えていると、どうなるのか?(通勤手当を例に解説します)

2019年10月1日から消費税が10%となりました。これを機会に、会社の取引にかかる消費税を見直されている経営者・経理担当の方向けのコラムです。

このコラムでは、会社における消費税の仕組みとともに、費用(仕入れ)について消費税の課税と非課税を間違えた場合の影響を具体例により解説していきます。

特に、費用に関して、本来『課税』とすべき取引を『非課税』や『不課税』としてしまっている場合には、税金の還付をもらえる (税務署からお金が戻ってくる) 可能性があります。

消費税の仕組み(概要)

課税事業者(ここではざっくりと消費税の申告義務がある会社、とお考えください)は税務署へ支払う消費税を次の計算式にて求めます。

売上に含まれる消費税-費用(仕入れ)に含まれる消費税

=税務署へ支払う消費税

売上に含まれる消費税は、お客さま(得意先)からもらう代金に含まれています。

消費税は最終的には消費者が負担する税金ですので、会社は消費税を負担しません。会社はお客さんが支払った代金の一部の消費税を一時的に『預かっている』といえます。

費用(仕入れ)に含まれる消費税 は、外注先・仕入れ先などへ支払う代金に含まれています。会社は消費税を負担しませんので、この費用 (仕入れ) に含まれる消費税は、一時的に『仮払い』をしているといえます。

会社としては、1年に一度、 売上に含まれる消費税 から 費用(仕入れ)に含まれる消費税 をマイナスして、その差額だけを税務署へ支払いをします。

預かっている消費税-仮払いした消費税

= 税務署へ支払う消費税

なお、 費用(仕入れ)に含まれる消費税 の方が大きい場合には、税務署から消費税が還付されます。つまり、税務署からお金をもらえます。

具体例(通勤手当を非課税としていたら)

通勤手当は消費税は『課税』が正しい

上記から、会社は税務署へ支払う消費税を少なくしたい場合、 売上に含まれる消費税 を小さくするか、もしくは、 費用(仕入れ)に含まれる消費税 を大きくすれば良いことがわかります。

ここで、 費用(仕入れ)に含まれる消費税 については、そのすべてが課税取引とはなりません。消費税がかからない取引があります、その代表例は給与・賞与・役員報酬などのいわゆる人件費です。

人件費は消費税は『非課税』です。

(厳密には不課税といいますが、ここではわかりやすさを重視します)

ただし、通勤手当は交通費の実費相当との考え方から『課税』です。

このことは、国税庁のHPにもはっきりと記載があります。

【照会要旨】従業員に対する通勤手当、住居手当等は課税仕入れに該当するのでしょうか。

国税庁ホームページ 質疑応答事例 消費税

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/16/04.htm

では、通勤手当をもし、『非課税』としていた場合にどれくらい税金へ影響があるのでしょうか?消費税と法人税の両方の視点から解説します。

具体例(金額による試算つき)

前提:課税事業者の会社で1年間の通勤手当の合計が240万円(10%消費税込み)を消費税が『非課税』としていた場合

消費税率は10%とします

間違った仕訳

借方)給与(通勤手当)240万円 貸方)現金 240万円

正しい仕訳

借方)給与(通勤手当)218万円 貸方)現金 240万円

借方)仮払消費税 22万円

通勤手当に含まれる消費税は240万円×10/110=約22万円です。

この22万円は間違った仕訳では通勤手当として費用としていますので、税務署へ支払う消費税を減らす効果はありません。

正しい仕訳で『仮払消費税』として仕訳をすることで、 税務署へ支払う消費税を減らす効果 があります。つまり、消費税を22万円少なくすることができます。

一方で、通勤手当は費用ですので、正しい仕訳とすることで費用が減って、会社の利益は増えることとなります。会社の利益が増えると法人税等は増えることとなります。

消費税は減るが、法人税等は増える

通勤手当の仕訳を正しくすることで費用が22万円減り、利益は22万円増えます。 法人税等の税率はここでは30%とすると、

法人税等は22万円×30%=6.6万円

増えることとなります。

消費税は22万円減って、法人税等は6.6万円増えるので、合計では

22万円-6.6万円=15.4万円の税金を少なくすることができます。

逆の言い方をすると、間違ったままの場合15.4万円の税金 を多く払っていることとなります。

『更正の請求』と『修正申告』の手続き

もし、上記のように消費税の課税・非課税を間違えていた場合、どうすれば税金を取り戻すこと(正しい申告へ訂正する)ができるのでしょうか?

消費税については、『更正の請求』

消費税については、間違えていた申告を正しい申告に訂正することで、消費税が還付され(税金が戻ってくる)ます。

この場合には、『更正の請求』という手続きをします。具体的には『更正の請求書』という書類に、何を、どのように間違えたか、を説明する資料(通常は、間違えた申告書と正しい申告書など)を添付して税務署へ提出します。

税務署では、更正の請求書の内容を調査・確認して、消費税を還付するかどうかを判断します。

なお、更正の請求の手続きは過去5年まで遡って適用できます、つまり過去5年分の消費税を訂正して還付される消費税も5年分戻ってくることとなります。

なお、税金の還付金は『還付加算金』という利息がつきます。平成30年分については年率2.8%です。詳細な計算はここでは割愛いたします。

法人税等については、『修正申告』

法人税については、間違えていた申告を正しい申告に訂正することで、法人税が追加で納付します。

この場合には、『修正申告』という手続きをします。正しい申告書を税務署へ提出することとなります。

この場合も、原則としては修正申告も上記の消費税の更正の請求の期間に合わせて、過去5年間まで遡って適用します

なお、税金の追加納付には、『延滞税』という遅延利息相当のペナルティーが課されます。

修正申告の場合で、修正申告の提出と同時に追加納付もする場合には、年率2.8%(平成30年分)です、この場合ですと、延滞税がかかるのは1年間のみとなります。 詳細な計算はここでは割愛いたします。

まとめ最後に

消費税率が10%となったことにより、費用(仕入れ)についての消費税の課税と非課税を間違っていると損をする割合が大きくなりました。

上記の具体例は消費税10%にて計算しましたが、消費税8%で計算すると、、

消費税は17万円(=218万円×8%)減って、法人税等は5.1万円(=17万円×30%)増えるので、合計では

17万円-5.1万円=11.9万円となります。

15.4万円と11.9万円とで差額3.5万円。消費税が10%へUPしたことによる影響額は3.5万円です。

通勤手当を例に挙げましたが、費用(仕入れ)についての取引についてこの機会に消費税の課税・非課税について確認されてみてはいかがでしょうか

消費税の還付を受けられる可能性があります。

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