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2019-10-02

中小企業の試験研究費の税額控除(中小企業技術基盤強化税制)の仕組みと節税効果について

試験研究費・研究開発費と聞くと大企業だけのものと考えがちですが、中小企業でも試験研究費に該当する費用が発生してる可能性は十分にあります。

そして、試験研究費があれば、税額控除を受けられるため節税になります。

この記事では、中小企業の試験研究費の税額控除について解説します。

2019年4月時点の法令、情報をもとに作成し、平成31年税制改正の内容を反映しています。

2019年4月1日以降に開始する事業年度(3月決算法人であれば、2020年3月期)以降を前提としております。

中小企業の定義

ここでいう中小企業とは、ざっくりというと次の条件を満たす法人です

  • 資本金1億円以下の法人
  • 前3年間の平均所得が15億円以下

ただし、大企業の子会社・グループ会社は中小企業とはなれず、この中小企業の試験研究費(中小企業技術基盤税制)は適用できません。大企業の子会社等とは、以下のようなケースです。

  • 親会社(50%以上保有)の資本金が1億円以上の場合
  • 持分の2/3以上を2以上の 資本金が1億円以上の 会社にもたれている場合、など

試験研究費の範囲

試験研究費の定義

製品の製造または技術の改良、考案もしくは発明にかかる試験研究 のために要する一定の費用

または

対価を得て提供する新たな役務の開発にかかる試験研究のための一定の費用(新サービス研究)

もう少し具体的には以下4つ

  1.   試験研究を行うために要する原材料費、人件費および経費  
  2.   試験研究のために外部に支払う委託研究費  
  3.   技術研究組合に支払う賦課金  
  4.   試験研究のために使用する減価償却資産の減価償却費

現に生産中の製品の製造や既存の技術の改良等のための開発研究であっても、また、開発研究に要した費用が製造原価や棚卸資産として計上される場合であっても、試験研究費に該当します。

試験研究費の人件費の範囲は「専門的知識をもってその試験研究の業務に専ら従事する者」「人件費」の「専ら」とは、年間を通してそのほとんどを試験研究業務をしている者と考えられます。兼務している人の人件費は対象となりません。按分計算の考え方はしません。

対象とならないもの

「製品の製造」又は「技術の改良、考案若しくは発明」に当たらない人文・社会科学関係の研究は対象とはなりません。

例えば、次のような費用は含まれません。

  • 事務能率・経営組織の改善に係る費用
  • 販売技術・方法の改良や販路の開拓に係る費用
  • 単なる製品のデザイン考案に係る費用
  • 既存製品に対する特定の表示の許可申請のために行うデータ集積等の臨床実験費用

税務調整

試験研究費は税務上の損金算入された金額に限ります。

試験研究費のうち、以下の税務調整項目が含まれている場合には税務上の調整をします。  (基本的には、税務調整項目を試験研究費から除外します)

  • 役員賞与 
  • 交際費 
  • 賞与引当金の繰入額 
  • 退職給付引当の繰入額

試験研究費の税額控除の全体像(中小企業技術基盤強化税制)

まずは、試験研究費割合が10%以下の場合と10%超の場合で、パターンが分かれます。

そのあとで、増減試験研究費割合が8%以下と8%超とで再度パターンが分かれます。

それぞれのバター別の控除割合と上限割合は以下の表のとおりです。

試験研究費

割合

増減試験研究費

割合

控除割合 上限割合
10%以下

8%以下

(又は設立1期目)

12% 25%
8%超 12%~17% 35%
10%超

8%以下 12%~13.2% 25%~35%
8%超 12%~17% 35%

試験研究費割合とは

試験研究費割合とは、過去3年の売上金額の平均のうち、当期の試験研究費の占める割合をいいます。

おおまかには、売上のうちに占める試験研究費の金額となります。

増減試験研究費割合とは

増減試験研究費割合とは、過去3年の試験研究費の平均から当期の試験研究費がどれだけ増加したか?の増加割合をいいます。

税額控除(節税)となる金額

控除額=試験研究費×控除割合(12%~17%)

最低でも試験研究費の12%は節税となります。

控除額には上限があって、法人税額の25%~35%が限度なります。

試験研究費の節税効果

節税効果(具体例)

中小企業が

  • 試験研究費1,000万円
  • 試験研究費割合が10%以下
  • 増減試験研究費割合が8%以下

の場合の節税効果を試算します。

この場合、控除割合12%、上限割合25%となります。

控除額=1,000万円×12%=120万円

法人税額の25%が限度ですので、

法人税は最低で120万円÷25%=480万円以上あれば、120万円の節税効果があります。

法人税が480万円あるときの利益を逆算すると、(ここでは法人税率20%とします)所得(利益)は480万円÷20%=2,400万円となります。

節税効果は利益次第

上記の具体例の続きを考えます。

同じ前提条件でも、試験研究費にたくさんお金を使って、利益(所得)が500万円となった場合、節税額はいくらになるでしょうか?

控除額は同じです。

控除額=1,000万円×12%=120万円

上限額は法人税額の25%ですので、

上限金額=利益500万円×法人税率20%×25%=25万円

となり、税額控除(節税)できるのは25万円となります。

まとめ

上記の具体例からもわかるように、控除額には上限額があります。試験研究費自体を増やしても、利益(所得)が少ないと、税額控除(節税)できる金額も少なくなってしまいます。

試験研究費による節税については、試験研究費の金額自体も重要ですが、利益(所得)がどれくらいあるのかにも注意を配る必要があります。

なお、中小企業にも『特別試験研究費』の税額控除は適用できます。特別試験研究費については、下記のリンクもご参照ください。

特別試験研究費の税額控除(大学などと共同研究・委託研究)の節税効果について

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