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2016-10-26

減価償却不足額について、具体例と別表16で徹底解説します!いつ認容されるか?もわかる

減価償却については、償却超過額(会計の償却費>税務の償却費)については、実務で頻繁にお目にかかります。

しかし、償却不足額(会計の償却費<税務の償却費)については、あまり話題になりません。

償却不足額について、インターネットで検索すると、『償却不足額はいずれ解消される』、『償却不足額は繰越償却超過額がある場合には、その金額の範囲内で認容減算ができる』などの記載があります。

この文言だけだと、具体的にどうなるのか?イメージしにくいですね。

そこで、この記事では法人の場合の減価償却不足額について、

  • 具体例を基に別表16の記載がどうなるか?
  • 申告調整金額(加算・減算)がどうなるか?

についてお伝えします。

この記事は減価償却の仕組みについての基礎知識をお持ちの方向けの内容となっております。

専門用語を使用して解説している旨をご了承ください。

なお、この記事は平成28年3月31日時点の法令に基づいております。

償却不足額の発生原因

会計上の償却費の方が税務上の償却費より小さいときに償却不足額が発生します。

主な発生原因は

  • 会計上の償却方法と税務上の償却方法が異なる場合
  • 単純に会計上または税務上の償却計算を間違えていた場合

が考えられます。

具体例

償却不足が発生した場合を取得した年度から償却が終わる年度まで時系列に従って、見ていきます。

具体例のは以下のような前提とします。

  • 取得日 2015年1月
  • 決算期 12月31日
  • 取得価額 500,000円
  • 耐用年数 5年
  • 会計の償却方法 定額法
  • 税務上の償却方法 定率法

つまり、会計と税務で償却方法が異なっていたケースとします。

別表16(2)記載例(2015年から2017年)

税務上は定率法が適用されますので、別表は16(2)を使用します。

別表16(2)の主な項目だけを抜粋したものが下記です。

別表16

2015年から2017年は償却不足額が発生するのみなので、申告調整はありません。

それぞれの年度ごとの計算をご紹介します。

2015年

会計の償却費

取得価額500,000×定額法償却率0.2=100,000

税務の償却費

取得価額500,000×定率法償却率0.4=200,000

会計と税務の差額

償却不足額200,000-100,000=100,000

申告調整は無し

2016年

会計の償却費

取得価額500,000×定額法償却率0.2=100,000

税務の償却費

期首帳簿価額400,000×定率法償却率0.4=160,000

会計と税務の差額

償却不足額160,000-100,000=60,000

申告調整は無し

重要ポイント

税務上の償却費を求めるときの期首帳簿価額は

取得価額500,000-会計の償却費100,000=400,000となるところです。

以下、期首帳簿価額を求めるときは同様です。

取得価額500,000-税務の償却費200,000=300,000となりません。

2017年

会計の償却費

取得価額500,000×定額法償却率0.2=100,000

税務の償却費

期首帳簿価額300,000×定率法償却率0.4=120,000

会計と税務の差額

償却不足額120,000-100,000=20,000

申告調整は無し

別表16(2)記載例(2018年から2020年)

別表16その2

2018年と2019年は償却超過額の加算が発生します。(上記の41欄)

そして、耐用年数5年を経過した後の6年目である2020年で減価償却超過額の認容減算ができます。(上記の43欄)

それぞれの年度ごとの計算をご紹介します。

2018年

会計の償却費

取得価額500,000×定額法償却率0.2=100,000

税務の償却費

期首帳簿価額200,000×定率法償却率0.4=80,000

会計と税務の差額

償却超過額100,000-80,000=20,000

申告調整は減価償却超過額 加算 20,000

この償却超過額20,000は翌年以後に繰越がされます。

2019年

会計の償却費

取得価額500,000×定額法償却率0.2=100,000

税務の償却費

期首帳簿価額120,000×定率法償却率0.4=48,000

取得価額500,000×保証率0.108=54,000

48,000<54,000より、

期首帳簿価額120,000×改定償却率0.5=60,000

会計と税務の差額

償却超過額100,000-60,000=40,000

申告調整は減価償却超過額 加算 40,000

この償却超過額40,000も翌年以後に繰越がされます。

2020年

会計の償却費

ゼロ(耐用年数は終了しており、期首簿価はゼロです!)

税務の償却費

期首帳簿価額120,000×改定償却率0.5=60,000

60,000-残存価格1=59,999

会計と税務の差額

償却不足額59,999-0=59,999

2020年に発生したこの償却不足額は繰越償却超過額60,000(=20,000+40,000)の範囲内で認容減算ができます。

申告調整は減価償却超過額認容 減算 59,999

2015年から2017年に発生した償却不足額はその年度に繰越償却超過額が無いので申告調整はありませんでした。

重要ポイント

ここでのポインは、繰越償却超過額がある場合の償却不足額は損金に算入できる。というところです。

申告調整額

2015年から2020年までの申告調整額をまとめると、以下のとおりです。

申告調整額

耐用年数5年を経過した時点の2019年までは加算が残ります。

その翌年の2020年には減算が取れるので、2020年までで考えると加算と減算は相殺されることになります。

耐用年数を過ぎた後で、償却不足額は解消されることになる、ということがわかります。

償却不足額についてのまとめ

減価償却不足額について、具体例を使って見てきました。

ポイントは以下の3つとなります。

  • 税務の償却費を計算するときの帳簿価額は『期首簿価-税務の償却費に達するまでの会計の償却費』である。
  • 償却不足額はその発生事業年度以後に繰り越して、償却超過額と相殺することはできない。
  • 償却超過額が発生した後の事業年度で償却不足額が発生した場合には、繰越償却超額額を認容減算できる。

減価償却不足額について、お悩み・お困りごとのお役に立てば幸いです。

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