特別試験研究費の税額控除(大学などと共同研究・委託研究)の節税効果について
一定の試験研究費がある法人は税額控除(節税)ができます。
この記事では、試験研究費の全体像と特別試験研究費(いわゆるオープンイノベーション型)について解説していきます。
この記事は、2019年4月時点の法令、情報をもとに作成し、平成31年税制改正の内容を反映しています。
2019年4月1日以降に開始する事業年度(3月決算法人であれば、2020年3月期)以降を前提としております。
試験研究費の税額控除 全体像
大きくは、総額型と特別試験研究費の2本柱です
総額型は大企業と中小企業で節税額に違いがあります
総額型 (大企業)
控除額=試験研究費×控除割合(6%~14%)
最低でも6%分は控除額となりますので、1,000万円の試験研究費があれば60万円の節税、1億円の試験研究費があれば600万円の節税となります。
(6%~10%) は試験研究費の増減割合に応じて決まります
ただし、法人税額の25%相当が限度です
一定のベンチャー企業の場合には、法人税額の40%まで控除できます。
売上のうちに試験研究費の占める割合が10%を超える場合には、この25%限度は最大35%までアップします。
一定のベンチャー企業の場合、 売上のうちに試験研究費の占める割合が10%を超えるときは、 この40%限度は最大50%までアップします。
総額型 (中小企業)
控除額=試験研究費×控除割合(12%)
中小企業の場合、12%分が控除額となりますので、1,000万円の試験研究費があれば120万円の節税、1億円の試験研究費があれば1,200万円の節税となります。
大企業と同様に、法人税額の25%相当が限度です
なお、 中小企業技術基盤強化税制 により一定の場合には控除割合が最大17%とできます。
また、一定の場合には、 この25%限度は最大35%までアップします。
中小企業技術基盤強化税制については、以下のリンクにて解説いたします。
中小企業の試験研究費の税額控除(中小企業技術基盤強化税制)の仕組みと節税効果について
特別試験研究費の税額控除の節税効果
特別試験研究費は、3タイプあります。
特別試験研究費の税額控除の対象とした試験研究費は、上記の総額型の対象とはできません。
1つ目は、法人(企業)が大学などと共同研究・委託研究のタイプ
控除額=特別試験研究費×控除割合(30%)
2つ目は、新事業開拓事業者等との 共同研究・委託研究のタイプ
控除額=特別試験研究費×控除割合(25%)
3つ目は、法人(企業)間での 共同研究・委託研究のタイプ
控除額=特別試験研究費×控除割合(20%)
限度額
特別試験研究費の控除は、どちらのタイプも法人税額の10%が限度です。
節税効果(具体例)
大企業が試験研究費が1億円、特別試験研究費が2,000万円の場合の節税効果を試算します。
試験研究費の全体としては、 1億円 + 2,000万円 =1億2,000万円です。
総額型 (大企業)
控除額=1億円×6%=600万円
法人税額の25%が限度ですので、
法人税は最低でも600万円÷25%=2,400万円以上あれば、600万円の節税効果があります。
特別試験研究費(大学等との共同研究)
控除額=2,000万円×30%=600万円
特別試験研究費は 法人税額の10%が限度ですので、
法人税は最低でも600万円÷10%=6,000万円以上あれば、600万円の節税効果があります。
特別試験研究費は、限度額が小さく設定されていますので、法人税が大きい、つまり利益が大きい場合に節税効果が大きくなります。
利益が大きく、節税効果が大きい場合でも、以下に解説するように手続きがかなり煩雑で、大学などの共同研究機関に協力をお願いする部分もありますので、
事務手続きのコストと節税メリットを比較して適用するかどうかを判断するのが適切です。
特別試験研究費の手続きの概要
特別試験研究費は、手続きが煩雑です。
手続きは2つに分かれます。ここでは、概要のみを記載します。
1つ目は、契約書に一定の事項を記載すること
大学の研究室との共同試験研究の場合に、契約書に記載することは以下の12項目です。
①共同試験研究の目的及び内容
②役割分担及びその内容
③実施期間
④参加企業、大学の名称
⑤実施場所
⑥使用する設備の明細
⑦直接従事する研究者の名称
⑧費用の分担及びその明細
⑨その法人が負担した費用の額の確認及びその方法
⑩成果の帰属及びその内容
⑪成果の公表
⑫定期的な進捗状況に関する報告の内容及び方法
2つ目は、 税理士などの監査確認を受けること 、大学などが特別試験研究費を認定すること
ここでは、大学との共同研究の場合の手続きをみていきます。
税理士等の監査
特別試験研究費について、金額が適正かどうか、契約に基づいたものであるかどうか、などを税理士などに監査を受けて、証明書を発行してもらうことが必要です。
大学などが特別試験研究費を認定
特別試験研究費について 、共同試験研究費用であることなどについて、大学側が確認をして、その確認書類を発行してもらうことが必要です。
まとめ
平成31年税制改正により、特別試験研究費の税額控除は、一部の控除率引き上げなどがあり、節税効果が大きくなりました。一方で、適用を受けるための手続きが煩雑です。
貴社の利益・法人税の金額と試験研究費の節税を考慮し、コストパフォーマンスをみて適用するかどうかを判断されるのが良いでしょう。